えー、いろんな事情もあり、なんと三年ちょっとも時間をかけてしまいました『放課後ParasiteMaze』。題名が暗に未来を予測していたのか、作者も途中で迷走しかけてしまい、なんとも間延びした連載になってしまった感もあります。
連載当初から付き合っていただけた方、いらっしゃるのでしょうか(笑) とにかくそれが不安です。
しかし『放課後TwilgihtZoon』からの七年間、総原稿数千枚前後にわたったこのシリーズ。ようやく収めることができました。このシリーズから生まれたキャラクターには色々と思い入れがあります。語り始めたらきりがないし、読み手には読み手のイメージがあると思うのであえてここでは語らないことにしました。
現在同人誌収録版の作業で、今しばらく僕はこのシリーズと付き合っていくことになりますが、本当に長い間お付き合いありがとうございました。
最後に、このシリーズのあとがきは、「座談会」と言う形でキャラクターに連載終了時の思いを語らせるコーナーを作っていましたが、今回は「アフターブレイク」と言う形でくだらないショートショートを書いてみました。
実に本当にくだらないです。おふざけです。シリアスな本編のイメージを壊したくない人は決して読まないでください。と書くと読みたくなるでしょう? 狙ってます。そしてアフターブレイクのテーマは「おっぱい」です。さらに読みたくなった人はエロイです。否定しないように。
では、アフターブレイクです。本当に読みたい人だけ読んでくださいね(笑)
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高台に置かれた露天風呂は、辺りを遮るものもなく、高原の遠景と眼下に広がる湖で彩られている。山の日陰になる部分にはまだ雪が残っており、それも見る者の目を楽しませた。
檜と岩をうまく組み合わせた湯船は、惜しみなく乳白色の湯をかけ流しにされており、外気温のためか湯煙をもうもうと上げている。風が穏やかなため、湯船の端から端まで見渡すのは難しい。
「たまにはこういうところ、こないとダメだよねえー」
思い切り手足を伸ばし、しなやかな筋肉をほぐすのは沢渡陽子だ。
「ホントいいところ。しかも森川先輩のおかげで貸し切りだし」
となりで頭にタオルを巻いた千明が上機嫌で言った。
「卒業旅行にナンデ千明が混じっているかが問題よね」
沢渡は意地悪く言った。
ここは東北の山奥にあるひなびた温泉旅館である。森川家の息がかかっており、その閑散とした土地柄に合わず、その施設は整備が行き届いている。森川らの卒業旅行として彼女たちはこの旅館に宿泊していた。
「いいでしょ、最終回また出られなかったんだし」
千明は口を尖らせて文句を言う。本当に不機嫌そうな顔だ。
「まだ根に持ってんの。一作目の最終回に出られなかったこと」
「もちろん! 二作目は出番なし。最終シリーズの最終回も名前だけとかってあんまりだわ!」
半べそをかく振りをして千明は訴える。
沢渡もこれ以上いじるのも不憫に思えて、身体を湯に浮かべて違う方向を見た。
「まあ、千明はともかくとして、どさくさにまぎれて、当然かのようにそこで寛いでるあいつらの方が問題だな」
沢渡の視線の方向には、赤い目をした二人が景色を見ながら、やんややんやと話している。もちろん彼女らは卒業生でもなければ、人間ですらない。
「いいじゃない。日本を離れる前にさ、温泉ってやつを味わってみたかったのよ」
セスはへらへら笑いながらタオルを頭に乗せたり外したりしている。
「自腹でここまで来たんだからさ……良いじゃないお風呂と泊まる部屋くらい……どうせ貸切で部屋あまりまくってるんでしょ」
草薙は切なそうな目で訴えかけてくる。
「真奈美……自腹って、けっこうかかったんじゃない? ここまで」
「うん……今月どう暮らそう……」
吸血鬼もそれはそれで生活が大変らしい。
「それにしても疑問に思ってたんだけど、セスって何でそんなに日本語がうまいの?」
「ん、長生きするといろんな言葉も覚えちゃうわけよ。日本に来るのも初めてってワケじゃないし」
セスはしれっとした顔で言った。簡単言うが、それは頭の回転や才能にもよるだろう。
「へえ……今度何か外国語教えてもらおうかなあ」
「吸血鬼が講師の駅前留学ですか……」
千明が呆れたように言う。
と、内湯の方から何人かの声が聞こえてくる。貸切だから、その声の主の特定は簡単だった。
恵美と夏希、そして森川恵理である。
「うわあ、すごいいい景色!」
恵美は素直に感嘆の声を上げた。
「ねえ恵理、あの二人どうするの? いいの?」
沢渡がセスと草薙を指差して言った。
「まあしょうがないじゃない、旅は道連れと言うじゃない。部屋も芹香に手配させたから、ゆっくりしていって」
「こりゃまた、丸くなったもんで」
沢渡は呆れたようにつぶやき、セスと草薙は湯船でハイタッチをしている。
恵理と夏希は露天風呂の湯船に入っていく。千明が恵理に近づき、その身体を眺めて感嘆の息をついた。
「森川先輩、やっぱり綺麗だなー。肌もすっごいきれい」
白磁のように白く滑らかな肌を見て、千明はつぶやいた。同性でも、いや同性だからこそ憧れをもつ玉の肌なのかもしれない。
「え、そうかな……千明ちゃんも綺麗だと思うよ」
「いえいえ、私なんかちっとも!」
そんな会話を広げる二人の背後から沢渡が忍び寄った。森川でさえ、温泉のリラックスムードからか、それに気付かなかった。
手の届く範囲まで近づくと、沢渡は持ち前の瞬発力を生かして、恵理を背後から抱きしめて胸を揉む。
「きゃああああああ!」
甲高い悲鳴が自然豊かな高原に響き渡る。
「何するのよっ!」
顔を真っ赤にして怒鳴る恵理。普段見慣れぬ彼女の狼狽に、夏希や恵美も目を丸くし、間近でそれを聞いた千明は湯船にひっくり返った。
「何よう、大げさな。減るもんじゃあるまいし」
「これ以上減ったら困るわよ!」
胸の小ささに多少コンプレックスのある恵理はむきになって叫んだ。
沢渡はそれを聞いてにやりと笑い、どこに持っていたのか、メジャーを取り出した。
「さって、皆さんお集まりのところだし、玉の肌だか知らないけど、女の魅力は胸よ、胸。と言うわけでバストコンテスト開催!」
ノリノリである。
「ななな、なにを……それになんでそんなものもっているのよ!」
森川は明らかに狼狽して沢渡がもつメジャーを指差した。
「お約束ってやつよ、オヤクソク……さあて、誰から行こうかぁ?」
沢渡はにやにや笑って、皆の胸を順番に見定めて行く。その表情はまるでスケベオヤジだと千明は思った。
「一番手は、あきらかに別格だと思われる人から行くか」
沢渡の視線の先はセスだった。西洋人の体つき、それもこの上ないナイスボディを持っている。さすがの沢渡もセスとは勝負にならないと見て、『参考記録』扱いにしようとの魂胆だ。
「……九二センチ。うーん、さすがね」
セスは沢渡を不思議そうに見た。
「たのしいの? 胸がどうとかって」
「そりゃね。ある人には分からないことかもしれないけど」
「ふーん……」
セスには理解できないようだった。
「さて、お次は!」
沢渡の視線がまた獣になる。セスを除く風呂場の全員の顔が引きつった。
「このおっぱいのあとなら怖くはないぞ!」
「あ、じゃあ私が」
手を上げたのは草薙真奈美だった。
「吸血鬼シリーズね。じゃあ真奈美こっちきなさい」
裸の湯船でバストサイズを計られにいく吸血鬼と言うのも不思議な光景である。
「……八一センチ。何か普通ね、と言うか中途半端? 存在が中途半端だと、ここも中途半端なのかもね」
「陽子……そんな言い方ないと思う」
ヒロインになりきれず、かといってライバルでもない不幸な影の薄い存在である彼女はここでも不幸な存在となった。
「じゃー、次は私ね。真奈美お願い」
ショックから抜けきれない真奈美は半べそで沢渡のバストを計る。
「八六センチ。言いだしっぺのことだけはあるね……」
沢渡は満面の笑みを浮かべて真奈美の報告を聞いた。
「さて、次は……」
じろりと残る面子を眺める。沢渡のテンションもかなり上がっているようだ。
「意外にいい体してる夏希ちゃん、来なさい」
「わ、私ですか?」
動揺しながら夏希は沢渡を見る。沢渡の顔はノリノリだ。
ため息をついて彼女の元に行く。
「む、これは……」
沢渡の表情が強張る。
「八八センチ! 実は夏希ちゃん巨乳!」
歓声を上げる。他のギャラリーからも思わず感嘆の声が上がった。
「あ、いや、私は旨が大きいと言うより、全体に太いから。皆さんと違って」
「いやいやいや、太くない太くない。十分いい身体だと思うよ。自信を持って!」
照れ笑いを浮かべる夏希に対して、意味不明の激励を送る沢渡。そしてなぜか拍手を送ってしまうギャラリー。
「さて、そろそろ真打に登場……って恵理! なんで逃げるの!」
沢渡が恵理を指名しようとすると、こそこそと露天風呂から逃げようとする恵理の姿が目に入った。
「セス、真奈美、恵理を抑えて!」
沢渡が叫ぶ。
セスは好奇心満々に、真奈美はやれやれといった表情で恵理を取り押さえる。流石の恵理もこの二人に抑えられては抵抗ができなかった。
「ふふん、無駄な抵抗を」
沢渡は意地悪い笑みを浮かべ、恵理はがっくりと肩を落とした。
「さて……ふむ七六センチ……やはり小さいわねえ」
「ああ、もう勝手にして!」
半ばやけくそで叫ぶ恵理。
「じゃあ、貧乳対決として千明!」
「はっ……」
恵理のサイズ測定に笑っていた千明の表情が固まる。
「っと、七七センチ? あら、僅差で千明の勝ち!」
意外な表情を浮かべる沢渡。千明もまさかと言う顔で沢渡と顔を見合わせた。
一方両手を床に付き、これ以上ないショックを受ける恵理。
「うそよ……うそよ、妹キャラにも負けるなんて……」
放心したようにぶつぶつとつぶやく。普段自信に溢れている態度を取るだけ、今の彼女の姿は滑稽だった。
その恵理は突然立ち上がり、真剣な表情で恵美を見つめた。
「えっ?」
引きつった笑顔で恵美は視線を感じる。
「まだよ! まだ終わっていないわ! 私と同じ遺伝子なわけだし、一年成長が遅い恵美さんなら、まだ勝負は分からない!」
ここは風呂場である。
素っ裸、仁王立ちで挑戦状を叩きつける恵理。それも低レベルな争い。
「傷を深める結果にならなきゃ良いけど……」
沢渡はぼそりとつぶやき、恵美のバストを計った。
どこかで鹿威しの音がする。
高原に静寂が包まれて、そのあとに森川恵理の悲鳴がこだました。
FIN.
